第40章


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「うむ。良いな、お前達?」
 見回すと、ミミロップ達はオッケーとそれぞれ指や頷きで軽快に示した。
「へへっ、気合いもばっちりなようで。あっしも幾分か安心して送り出せるってもんです。んじゃ、行きやしょか」


 案内されるまま洋館の裏手辺りからしばらく歩いて森を抜け、その先の水辺に待ち構えていた“それ”を前に、俺は半ばぼうっとして見上げてしまった。
「ウワッハッハッ!どうだ、すげえだろうっ!」
 立ち尽くす俺の姿に鼬達のリーダー格らしい一頭が気付き、“それ”の青い背の上から、仁王立ちで勝ち誇ったように笑いかける。
「この俺様、キャプテン・フローゼル様が率いる海賊団――もとい、今はピカチュウ海軍だったっけか、ハァ……。
ゴホンッ、が誇る、ホエルオーの堂々たる勇姿ッ!」
 あれがフローゼルか。得意げになってみたり、急に溜め息をついてみたり、随分と気分の浮き沈みが激しい奴のようだ。
そんなことよりも、奴の乗っているホエルオーとかいう鯨ポケモンの何と大きいことか!
 もしかしたらギャラドスの二倍以上は優に有るんじゃあなかろうか。ちょっとした人間の漁船のような巨体だ。
「ボス達がお待ちだろうが。さっさとこっちに適当なロープの一本でも垂らしなせえ、フローゼル」
「これほど立派なホエルオーはそうはいねえぞぉ。歳を食ってちぃっと耳の方は遠くなってきちまってるが、その分そこらのホエルオーよりでけえし、多くの経験を積んでいる。さすが俺様が選んだ……」
 まるで聞こえていないふうにべらべらとしゃべり続けようとするフローゼルを、苛立った様子でドンカラスは飛び立って蹴りつける。
「てめえのくだらない自慢はいいから、さっさとボス達を乗せやがれってんだ」
「……へい、どーもすみませんでした」



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