第40章


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 ミロカロスの意外な言葉に促されるまま、俺はキュウコンに視線を向ける。
「お前の為等と思い上がるでないぞ。私はただ我らの事でお前達の間に軋轢が生まれたと、勝手な恨みを抱かれても鬱陶しいと思ったまでだ」
 キュウコンはばつが悪そうに僅かに眉間をひそめて言った。
「だが本当に良いのか?お前達も自身の存在が明るみに出ることは好まぬだろう」
「これから世に飛び立とうとする者が、何ゆえこそこそと日の陰を歩み続けねばならぬ。しがらみを脱ぎさった今、隠すも話すも己の自由だ」
「心配なさらずとも、世界を生きる者の一つとして我らは己が身は己で守りますわ。
それに、あなたも、あなたが仲間に選んだ者達も、我らの力を利用せしめようとするような姑息な者達ではないと信用しております故」
 にやり、とほくそ笑むようにしてミロカロスは言った。
 例え我が下にアブソルがいようと、俺の世界征服の野望には神族が与することはないということも、遠回しに告げているのかもしれない。しかし、そんな予防線を張らずとも、向こうから協力を申し出られたとしても、俺の答えは殆ど変わらなかっただろう。
「……ふん、当然だ。お前達の超越した力など借りずとも、我が覇道を歩む足は鈍ることは無い。
神の力に頼らねば何も出来ぬような軟弱な輩は、我が配下に一匹としておらぬ。
もしおればその根性、一から叩き直してくれるわ」
 栄光は己の手と力で掴んでこそ輝く。過ぎた力に半ば振り回されるようにして得たもの等、すぐに扱いきれなくなって手からすっぽ抜けてしまうに決まっている。
「ええ、そうでしょうとも。では、ディアルガ」
 ミロカロスの合図にボーマンダは頷き、どすんと前足を踏み鳴らす。途端に周囲の硬直した感覚は解け、
「――?……ええッ!?み、皆さんいつの間に……!」
ロズレイドは突然目の前に現れたとしか思えないであろう三匹の姿に、吃驚の声を上げた。

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