第40章


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 誰にでもない言い訳をして、俺はアブソルを担ぎ上げる。子どもといえど、俺よりも何回りか大きい体格差に四苦八苦して運ぼうとしていると、物音に気付いたのか机に突っ伏していたロズレイドがむくりと顔を起こした。
「何だ、お前も起きていたか」
「……ええ、ちょっと眠ろうにもどうにも眠れなくて」
 赤い顔をして困り果てた様子でロズレイドは答える。まあ、奴の置かれている状況を見れば無理もあるまい。
今は無防備に寝息を立てているとはいえ、肉食のハンターであるマニューラにがっちりと肩を組まれていては気が気でないだろう。
例え同胞であろうと、自制の利かない寝ぼけ様にうっかりあの鋭い爪を突き立てられたり噛み付かれたりすれば大怪我だ。
こやつのことだ、どうせ絡まれたまま抜け出す機会を見出せなかったのだろう。
まったく、図体は無駄に俺よりずっと大きくなりおっても、気の小ささまでは変わらぬな。仕方の無い奴め。
「アブソルをちゃんとした所に寝かし付けに行く。お前も手伝え」
 助け舟のつもりで俺はロズレイドに言った。
「あ、はい、分かりました」
 何故だか少し名残惜しそうに、ロズレイドはそっと注意深く黒い腕を抜け出して立ち上がった。
「ふう、やれやれ。ああ、えーと、ちゃんとした寝床でしたっけ。皆さんここで雑魚寝しているようですし、
二階のベッドが空いているかと」
「そうか」
「いつもはひどい取り合いになるんですよ。今日は運がよかった。あ、その前に少しお待ちを――」
 床に置き去りにしていた毛布をロズレイドはそそくさと拾い上げて、マニューラにかける。
「これでよし、と。すみません、まだ二階にも毛布はあるはずなので、先にお貸しください」
 どこか妙だ。師弟関係になったとは聞いていたが、こんなにも従順に尽くすとは――そうか。



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