第40章


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 数刻前までの洋館を引っ繰り返しそうなどんちゃん騒ぎが嘘のように食堂内は静まり返り、寝息やいびきだけがまばらにあちこちから響いてくる。
室内は机と床の区別も無く雑多なゴミや酔い潰れて寝ているポケモン共が一緒くたになって散らかり、まさに掃き溜めと言うに相応しいような惨状となっていた。
 そんな品行方正とはかけ離れた吹き溜まりに、すっかり馴染みきって寝転がっている三つ柱。
よもや本当にただ自由を満喫しに来ただけだというのか。確かにいつでも訪ねろとは言ったものの、こんなに間を置かず、威厳も気品もへったくれもない間の抜けた姿を晒されるとは思いもよらなかった。
最も、こやつらも遥か高みを流れど、元まで辿れば源は我らと同じ。創世の神によって創られ、育まれたもの達だ。所変われば品も、ポケモンも、人間も、神も変わる。
だが、同じ場所に立ってしまえば、本質はあまり変わらないということだろうか。
 だからといって、何もここまで堕ちることも無かろうに。
神の存在など信じてはいなかった俺でも、今の状況には頭がくらくらする程だ。
もしも、こやつらを厚く信仰している者達がこの名状しがたいだらしない寝相や、下々の者と一緒になって吐き散らしていた冒涜的な言葉、いつかのコンテストのリベンジ戦という名目で行われた奇怪で異様な儀式に長い身をのたうち踊らせていた姿を見知れば、たちまち正気を失って卒倒、発狂しかねない。
ああ、何と恐ろしい邪神どもであろうか。せめて、アブソルだけはこんな風に育たぬよう見守ろう。深く心に誓った。
 そのために今出来ることは、この堕落しきった空間から一刻も早くアブソルを連れ出してやらねば。
濃厚な酒気漂う堕落した部屋に子どもをいつまでも転がしていては、健康にも情操にも悪い。
ふん、他の馬鹿者どもは目覚めた時のおぞましい頭痛と気だるさに精々苦しむがよいわ。
……決して、宴の主役を降ろされて、いじけているわけではないからな!



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