第39章


[08] 


「ええ。ではどこから探してみましょうか」
 尋ねるロズレイドをよそに、ミミロップはそっと壁に片手をつき深く目を閉じて集中する。
「こっちよ」
 それだけ言って、ミミロップは壁を手探りしつつ二階の方へと歩いていった。何をやっているのかと不思議に思いながらロズレイドは後を追い掛けていく。
 壁伝いにミミロップは二階の廊下をどんどん進んでいき、ある一室の前でぴたりと足を止めた。

「この部屋ね」
 ミミロップは確信を持って扉を押し開ける。そこはかつて人間が住んでいた頃、寝室として使われていたらしき部屋で、今もドンカラス達により来客を泊めるゲストルームとしてもっぱら利用されている。
最後に洗われたのがいつか分からないような薄茶ばんだシーツの敷かれたベッドと、年季の入ったタンス等が備え付けられている部屋の中で、壁に掛けられている不気味な肖像画が何よりも目を引いた。

しかし、肝心なムウマージの姿はどこにも見当たらない。
「居ないようですけど……」
「隠れているだけよ」
 そう言って、ミミロップは奥の肖像画を見やると、描かれている黒い顔の赤い目がぎくりとして一瞬揺れた。
 ふふん、とミミロップは笑い、肖像画の前に行く。
「出てきなさい。かくれんぼはおしまい」
 両手を腰にやり、ミミロップが声をかけると、

「むー、ばれちゃったー。ミミロップにはかなわないなー」
観念した様子で絵が喋り、中からムウマージが姿を現した。
「なんと。どうして分かったんですか?」
 驚くロズレイドに、ミミロップは得意げに微笑む。
「波導を感じ取ったの。きびしー修行の成果ってやつね。ま、その話は後にして、それよりも今はマージちゃん」
「んー?」
 こっそり部屋を出ていこうとするムウマージを呼び止め、ミミロップは幽霊のことを話す。
「みんな怖がるし、イタズラされて困っているの。だから新しい友達には悪いけれど、帰ってくれるようにマージちゃんから言ってくれないかなぁ。ドン達がずっと帰ってこなかったらマージちゃんも嫌でしょ、ね?」
 ミミロップはムウマージの目を見ながら諭すように言った。
「むー……わかったー」

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