第39章


[05] 


どこか不安げに言うムウマージに、ロズレイドは微笑んで頷いた。
「進化した今はロズレイド、ですがね」
 なーんだ、と途端にムウマージは退屈そうにする。
「ちぇ、あたらしいともだちが、またきたとおもったのになー」
「はは、ご期待に沿えずすみません。元気にしていましたか?一匹だけで留守番なんてえらいですね」
 みんな居ないけど、どうやら元気そうで良かった。ホッとしてロズレイドは言う。
だが、ムウマージは急に少しふてくされたように頬を膨らませた。
「いっぴきじゃないもーん!」
 ぷい、と顔を背けてムウマージは二階の奥へとふよふよ飛んでいく。
 ――どうも機嫌が悪いみたいだ。何か怒らせることを言ったかな。それに、新しい友達と、一匹じゃないってどういう意味だろうか。
 ロズレイドは確かめて謝ろうと階段を上がりムウマージの後を追った。そして奥の廊下に差し掛かかった辺りで、不意に背のマント状に伸びた葉っぱに何か引っ掛かったような感触が伝わる。
くいくい、くいくいと続けてその感触は伝わった。これは引っ掛かったわけではなく、何者かが明確にマントを掴んで引っ張っているようだ。
「なんだ、やめてくださ――」
 反射的にムウマージの仕業だろうと思い、ロズレイドは気楽に振り向く。しかし、そこにいたのはムウマージではなく、5から7歳くらいの人間の女の子だった。
 驚きのあまり、声すら上げずにロズレイドは硬直する。次々と疑問と焦りが浮かんで頭の中がぐるぐると回っていた。女の子は生気の無い青白い顔ににこりと笑みを浮かべる。
 ――新しい友達って。一人じゃないって……!
 その意味と、ドンカラス達が洋館を空けてトバリに言った理由。ロズレイドはすべてを今、理解した。
「う、うわあああああああッ!……――」


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