第39章


[04] 


 開け放たれたままの玄関をくぐり、後ろ手に扉を閉めるとロズレイドは久方ぶりの洋館を見回す。
踏み込む度に朽ちかけた床板は耳障りにぎいぎいと鳴き、所々が擦り切れ汚れ果てたカーペットは埃を吹き、カビや染みで斑に化粧した内装達は何一つ変わらず、相変わらずの薄気味悪さで迎えてくれた。
ひどいな、とロズレイドは苦笑しながらもどこか不思議と心に安堵感が湧いていた。
 仲間達の行方や、今後の身の振り方等色々と考えなければならないことは有るが、何はともあれとりあえずは二階の書庫で荷物の整理をして落ち着こう。
そう決め、ロズレイドは階段へ足を向けると、
「だーれ?」
どこからともなく間延びした声が響いた。ヒヤリとしたものを感じロズレイドが歩を止めた直後、目の前に突然紫色の霧のようなものが渦巻き、一瞬でとんがり帽子の魔法使いのような姿をしたゴースト――ムウマージが現われる。
「ここはピカチュウとドン達のアジトなんだよー。そーしき……まちがえた、そしきのなかまか、マージのともだちいがいのコは、はいっちゃダーメ!」
 ムウマージはぐっと胸を張るようにして堂々と言った。
 その姿を見て、ふっ、とロズレイドはため息をつくように笑う。
「やだなあ、マージさん。僕ですよ、分かりませんか?」
 ムウマージは怪訝そうに首を傾げ、ロズレイドの周りを少し遠巻きにぐるりと回って観察し始めた。
そして、むー、と唸ると、得た情報を整理するように再度首を傾げる。
「もしかして……ロゼリア?」

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