第39章


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 不意に視界がぼやけて揺れ、足がぐらつく。まったく、酷い目にあった。まだ頭がくらくらする。状況が切迫していたとはいえ、もう少し丁寧に降り立たせることは出来なかったのか。非難の念を抱きつつ振り返ると、すぐ背後にあった白い竜の大きな顔と間近で対面する。驚いて離れるが、神体はうつ伏せに倒れたままピクリとも動かない。さしもの神の肉体も、強烈な着地の衝撃により昏倒しているようだ。ギラティナの思考も感じ取れない。
 自分の体を散々な扱いにされ、本来の持ち主も災難なことだ。こんなことを知られれば只では済まないだろう。神体を痛めつけてしまった以上に不味いのは、今回の件はパルキアに対して秘密裏に行われているものであろうこと。寸前までパルキアの領地であることを俺に伏せ、こそこそと潜入させていた辺り、
それはほぼ間違いないと見ていいだろう。
 もしかすると他の神々にすら知らせておらず、完全なギラティナの独断という可能性さえある。もしもそうだと仮定して、一体何の意図があってそんな危険な綱渡りを敢行したのか――。
 奥に聳える祭壇の頂点から射してくる白銀の輝き。離れたここから見ただけでも意識を巻き込まれてしまいそうな異彩を感じる。あれが目的の白金の宝玉に違いない。ギラティナと同じように、パルキアと恐らくはディアルガも、アルセウスに次いで最も強大な力を司る神々は、力を三つに分けられてしまっているのだろう。大きな力の源であるあの宝玉を手にし、ギラティナが完全な能力を取り戻した時、絶対的な神の力に対抗しうる者は今誰一人いない。
その気になればすべてを掌握してしまえるのだ。

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