第39章


[27] 


 意識が暗がりに沈んでいく中、誰かが言い争う声が聞こえる……。
それは今ではない、遥か遠い過去の残響に思えた。

――『また創り直す、だと?』
『主のご命令です』

『何故だ。相応の理由を聞かせてもらおう』
『何故?主がお気に召さなくなったと申した。我々にそれ以上の理由など必要ないでしょう』

『ここまで我々が、私が守り育ててきたものをまたもすべて捨てろというのか?』
『愛着でも抱きましたか?そのような感情など我々には余計なものです。捨ててしまいなさい』

『余計なもの……違う、これは余計なものなどではない』
『……どうやらあなたは少々お疲れで、おかしくなってしまったようだ。すぐにエムリット達を呼んで、治してもらいましょう』

『いや、おかしくなったのはお前達だ。もう私は辛抱ならぬ』
『世界の元を、そして我らを創りだしたのも主だ。その命に逆らおうというのですか?』

『何者であろうと、もう世界を壊させはしない』
『そうですか……。残念ですが、今のあなたには力付くで消えてもらうしかないようだ。さようなら――』

 遠退いていく声。途端に沈んでいた意識も急浮上し、ひやりとした石の感触を体に伝える。
「――う、ぐ……」
 目覚めた頭に全身が鈍い痛みを訴え、喉が自然と呻く。

 ――……一体どうなった?
 痛みを堪えながら手足に力を込めると、ゆっくりと体は地べたから持ち上がった。とりあえず四肢はまだ付いているようだ。
 重い瞼を持ち上げる。視界に広がった光景は、異空間から見えたものと同じ、乳白色の石に一面を覆われた屋内だった。


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