第39章


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エンペルトは、森の洋館で起こった幽霊騒動の顛末を(ただし、本物の幽霊の事は除いて)話した。
突如巻き起こった不可解な現象と電化製品の暴走。その正体は、ゲンガー達に置いてけぼりにされ、長い時間一人ぼっちで待ち続けていたロトムと、ひょんな事から彼を見つけたムウマージが結託した、少々度を過ぎたイタズラ。
始めは大笑いしていたエレキブル達も、その最中にやってきたトレーナーにロトムが捕まってしまい、友達を失ったムウマージが酷く落ち込んでいると聞くに連れ、徐々に神妙な顔付きになる。

「そうか……そりゃあ辛えだろうな。マージも、そのロトムって奴もよ」
「そうなんだ。さすがに掛ける言葉も見つからないポチ……んだ」
「まあねえ、あっしもこんな頭にされた恨みもあるが、思えば可哀想な事をしたもんでさ」
追いかけっこに疲れ果て、ぐったりと隅の木箱に座りこんだドンカラスも、思わず溜息をつく。
「……なーに、ドン達がそんなに心配するこたねえさ」
おいしい水のボトルを差し出しながら、エレキブルは俯く二匹の背中をバン、と叩いた。
「捕まったっつっても死んだ訳じゃねえだろ?生きてさえいりゃ、また逢えるかもしれねえ。
 もっとも、ゴーストに生死があるのかどうかは分からねえがな。
 ま、俺らが今こうやってこんな事言えんのも、ピカチュウ達のおかげだけどよ」
「だよね〜。あの頃は自由になる日がくるなんて思わなかったもんね」
「そうだな……時が経てば傷も癒える。どんな痛みも悲しみも、いずれは自分の糧となるものだ」

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