第39章


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 何だ、あんなに力強く振り下ろした割りにはまったく肩透かしの威力ではないか。
魂の無い神体というのは、案外大した力を持っていないのかもしれない。見くびる俺を尻目に、音も無く見えないカッターナイフが滑っていくかのように砂地の跡はまっすぐ伸びていっていた。
俺がパルキアの攻撃の真の恐ろしさに気づかされたのは、見えないカッターナイフが偶々進路上にあった柱を竹を割るかのごとく軽々と縦に真っ二つにし、その残骸が地に倒れた音を耳にして振り返った時だった。
 俺は声を失い、半ば呆然として、初めからくっ付いていなかったように綺麗な柱の切り口を見つめた。
まったく理解を超えた力だ。衝撃波だとか風の刃だとか、そんなちゃちなものでは断じてない。
もっと恐ろしいものの片鱗だった。

『空間の繋がりを断つ。音にも目にも捉えらず、どんなに優れた盾も意味を成さん。まさに究極の刃よ。
まったくもって粗暴で野蛮なやり口だ。神体にも持ち主の心根が染み付くといえよう』
 忌々しくギラティナは言う。
『奴が爪を振るってから空間が完全に裂けるまでは、ほんの一寸の間がある。
……お前の頭には煮え立つ湯に浮く泡のごとく、次々と疑問と疑念が沸いていることであろう。
だが、今は走れ。余計なことは考えず冷静に、私の指示通りにだ』


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