第39章


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「もう大丈夫そうね」
 後ろ姿を見届け終え、ミミロップはやれやれとベッドに腰を下ろした。
「さて、これからどうします?すぐにでも支度はできますよ」
 壁に寄り掛かり、ロズレイドは答えを分かりきっているといった顔でミミロップに聞く。
「どうするって、私は洋館でしばらくゆっくりするつもり。あー、岩場以外の所で寝られるってさいこー」
 ごろりとベッドに寝そべり、ミミロップは気の抜けた声で答えた。予想外の返答にロズレイドは心底意外そうな顔をする。
「何その顔。言いたい事でもあるわけ?」
「いえ、てっきりすぐにでもピカチュウさんを追いに行くと言うのだと思っていたものですから」
 なーんだそんなこと、とミミロップはなんてことはないように笑う。
「無理に追うのはもうやめたの。意固地になっちゃってまた喧嘩になるのは分かりきってるから。一匹で行ったのはきっと何か事情があってのことだろうし、元気になったアブソルちゃんと一緒にちゃんと帰ってくるって信じて待ってる。私達が今出来るのはピカチュウが帰って来た時、怒ったり責めたりしないで笑顔で迎えてあげられるようにするだけよ」
「そうですか。はてさて、いつまで我慢していられることやら。言いだしっぺが一番笑顔を守れるのか怪しい所がなんとも」
 嫌味っぽく言いつつも、いつもピカチュウの事となればすぐに熱くなって飛び出していったミミロップが、しばらく会わない内に随分と変わったものだとロズレイドは心の中で感心した。
「うっさいわねー」
「僕は下で新たな年を祝うささやかな宴の準備でもしてきましょう。お熱くピカチュウさんを迎えるにもしっかり英気を養っておきませんとね」
 投げつけられた枕をひょいと避け、ロズレイドは笑いながら逃げていった。



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