第38章


[07] 


「わ、分かってるよ。ちょっとからかっただけだっつの」
 ニューラは鳥の尾羽に似た赤い尻尾を巻き、すごすごと引き下がっていく。すれ違う際、ロゼリアを恨みがましく横目で欠かせず睨み付けていった。
「おい、待ちな」
 その背に、マニューラが出し抜けに声をかける。ニューラは再び肩をびくっとさせ、慌てた様子で振り返った。
「な、なんだっつの。もう文句は言わねぇって」
「いや、お前だけやけにこのロゼちゃんと親しげだからよぉ。荷物届けさせた時にどうかしたのかと思ってなぁ、ヒャハ」
 まさか光の石を奪った事がばれたのだろうか。ニューラの背に冷や汗が伝う。動揺を必死に隠そうと少し強張る顔を、マニューラは知った上でにやにやと見つめた。
「特に何も問題はねぇっつの。届けるついでにちょっと仲良く世間話をしただけさ、なあ?」
 気さくな風を装い、ニューラはロゼリアに話をふった。だが、目では『石の事は絶対に言うな』と睨みをきかせている。
「は、はい」
 ロゼリアは力なく答えた。
「へーぇ。それなら丁度良いな」
「何がだよ」
 恐る恐るニューラは尋ねる。
「普通は四か五匹で組むところを、いつも自分達のチームは三匹だけで大変だとぼやいてたろ?そんなに仲が良いんなら、今日の狩りにはロゼリアをオメーのチームに加えてやるよ」
 え、えぇー!?は、はぁーッ!?二匹の声は、シンクロするようにぴったりと同時に上がる。
「連携もバッチリ。これは決まりだ、ヒャハハ」
「ふざけん――」
「め、い、れ、い、だ!」
 ぐ、とニューラは言葉を飲み込んだ。
 ロゼリアはあまりの状況に頭をくらくらとさせてマニューラを見つめる。果たして自分のことを鍛えたいのか、それとも窮地に落とされて足掻く様を見て楽しみたいのか、計りかねていた。
 マニューラはロゼリアの様子を見据え、どこか満足気に微笑む。
 ――あ、きっと両方なんだ……。
 ロゼリアは確信し、諦めたように苦笑した。
「心配すんな。オメーが足引っ張る分は、少しくらいならオレがカバーしてやるからよ。それじゃあテメーら、改めて出発の準備だぜ。四十秒で支度しなー! ヒャハー!」

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