第38章


[06] 


「へっ、びびってだんまりかっつの。顔真っ赤だぜ、泣くのかボクちゃん?
 何も出来ないんだったら、さっさとネズミどもの所へ帰ったらどうだ。垂れ流した涙と鼻水を優しく拭いてもらえんぞ」
 ニューラは更に執拗にロゼリアをコケにし、周りのニューラ達はせせら笑いながらやり取りを眺めていた。黙ってじっと二匹の様子を見ていたマニューラは、仕方なさそうに小さくため息をつく。
 ――我慢していたけれど、もう駄目だ。
 とうとう堪えきれずに涙が零れてしまいそうになった時、ニューラが胸倉を掴みそうになったその瞬間、二匹の間に割って入るようにナイフのごとく研ぎ澄まされた氷の礫が、地にカツンと乾いた音を立て突き立つ。
 びくりとしてニューラはロゼリアから素早く離れ、周りのニューラ達もしんと静まり返った。
ロゼリアは礫が飛んできた方を見やり、背筋がぞくりとする。普段の陽気さを微塵も感じさせない、重く冷酷な輝きをマニューラの瞳に一瞬垣間見た気がした。
「見てりゃ、いつまでもぐだぐだとうるせーんだよ。こいつを連れていくって決めたのはこのオレだ。これは提案でもお願いでもねぇ。命令なんだぜ、分かってるかクソッタレ共」

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