第38章


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 シンオウ地方の北部に位置するキッサキ方面は、シンオウ中央に切り立つテンガン山から吹き下ろす寒気によって、絶えることなく雪が降り続けている。地面も、木々も、すべてが白く化粧された純白の世界。その美しさとは裏腹の厳しい極寒の環境にも、ポケモン達は適応し、力強く生きている。
 細雪振る白一色の森に、木の合間を縫うように駆ける幾つかの黒。その最後尾の更に後方、置いていかれぬよう精一杯に走る小さな姿が一つ。

 息を切らしかけながら遥か後方にいるロゼリアを、ニューラは憎たらしく見つめる。危惧した通りロゼリアに足を引っ張られ、他のチームにかなりの遅れをとっていた。
「くそっ、お荷物め。たまったもんじゃないっつの」
 走りながらニューラは呟くように吐き捨てた。
「仕方ないでしょ、マニューラの言い付けだもの」
 自身も釈然としない思いを抱えながらも、横のメスのニューラがそれを嗜める。
「それならお前がおぶってやったらどうだっつの。前みてーによ」
「ふん、冗談じゃあないわ。もとはと言えば、あんたがあいつに変なちょっかいだしたせいじゃない」
「おーおー、このままじゃあ何も捕れなくて飯抜きだ。かわいそーに!ギャハハ」
 二匹の言い合いを後ろから他人事のように眺め、もう一匹のオスニューラが笑い飛ばす。ちっ、と舌打ち、二匹は互いに顔を背けた。


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