第38章


[05] 


「ふざけんな!こんなヘナチョコ野郎連れていけるかっつーの」
 おろおろと立ち尽くすロゼリアに苛立たしげな一瞥をやり、ニューラは怒鳴るようにマニューラへ訴える。周りからも非難や奇異の目を向けられ、ロゼリアは悲鳴を上げて逃げ出したい気持ちで一杯だった。何せ、ロゼリア自身もまったくそんな話は聞かされていなかったのだ。ニューラ達が集まってくる前、マニューラは不敵な笑みを浮かべて、楽しみにしていなとだけ言った。先の“死にそうな目にあわせてでも甘い考えを変えさせる”という発言からして、絶対にろくでもない事を企んでいるとロゼリアはこの時点で読み取っていたが、
しっかりと踏み付けられていては逃げ出せるはずもなかった。
 ニューラの文句を聞きながら、マニューラは面倒臭そうに扇状の赤いたてがみを爪先で繕う。右の耳から左の耳へと適当に聞き流しているのは誰が見ても明らかだった。これ以上言っても無駄だとニューラは舌打ちし、ロゼリアに直接詰め寄っていく。
「おい、ヘナチョコ。これから行くのは楽しいピクニックじゃないんだっつの。お前みたいなお荷物背負わされたら、皆迷惑すんだよ」
 威圧的に迫るニューラに、ロゼリアは黙って俯くことしかできなかった。
 やっぱり怖い。心配していた通り、いざニューラを目の前にすると、口と喉は凍り付いたかのように動かなくなって何も言い返せない。情けなくて、悔しくて、目が熱くなる。

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