第38章


[04] 


「でも、具体的にどうすれば……?」
 捻りだすようにロゼリアは声を出す。
「勝つためならどんな手でも使えっての。さっきだって、オメーなら突くついでに毒花粉をばら撒いたり、針ごと飛ばして不意をついたり、なんなりと工夫の余地はあっただろーが」
「だって、そんなの卑怯じゃないですか」
 やれやれ、とマニューラは呆れ、ひらひら両手を振るう。
「そんなしょっぱい正義感しょってるから、オメーはションベンくせーんだよ。
卑怯なんて言葉は忘れちまえ。卑しむべきなのは敵への怯えと、無様な負けだ。
負けたら、死んじまったら何の意味もねぇ」
 ふと一瞬、マニューラの赤い瞳に愁いが帯びる。
下敷きにされているロゼリアはそれに気付くことなく、口惜しげに唸って押し黙った。
 音まで凍り付いてしまったかのような冷たく沈んだ片時の静寂に広間が包まれる中、上層に開いた巣穴の奥からは、うっすらとざわめき声が聞こえてくる。
「あいつらが目を覚まし始めたみてーだな。そーいや今日は……ヒャハ、いいこと考えた」
 マニューラの口元がにやりと大きく弧を描く。
「オメーのゲロ吐きそうなほど甘ったるい考えをぶっ壊してやるよ。習うより慣れろ。嫌でも変えざるをえねーさ、死にたくなきゃあな」

 ・

「はあーッ!?どういうことだ、マニューラ!」
 ニューラの一匹が驚愕の声を上げる。広場に集まる他のニューラ達も騒然としていた。
「聞こえなかったのか?今日の狩りには、このロゼリアも連れていくって言ったんだ」

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