第38章


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 分かったよ、とニューラは諦めて呟く。しかし、その直後に何かに気付いたように「ん?」と首を小さく傾げた。
「……待てっつの。ちょっと考えたら、俺が勝っても何もメリットがないんじゃねえか。石は元々お前にやるつもりのものだったしよ」
 じろりと視線を向けるニューラに、マニューラは面倒臭そうに舌打ちする。
「ならオメーはどうしてほしいんだよ?」
 言われて、ニューラは少し考える素振りを見せた。
「そのヘナチョコ野郎から四天王の座を剥奪だ。そしてマニューラ、お前が代わりにその座についてくれ」
 マニューラは解せない顔をする。
「……どういうつもりだ?」
「お前を差し置いてこんなヘナチョコが四天王なんて前々から気に食わなかったんだっつの。お前だって納得いかねえだろ?」
 ニューラは立ち尽くすロゼリアを指差して訴える。マニューラは呆れた表情を浮かべた。
「おいおい、別にオレは……」
「俺にさえ堂々と叩きのめされたと聞きゃ、ネズミやカラスの野郎もこいつがどんだけヘボか思い知るっつの。かっこよく完勝決めてやるから見てろよ、マニューラ」
 言うだけ言うと、ニューラはロゼリアに余裕の一瞥をくれてから、意気込んだ様子で部屋を出ていった。メタモンは慌てて変身を解き、岩に同化しながらその後をこっそりつけていく。
 マニューラは大きくため息を吐いた。
「変なことになっちまったなあ、おい」
 ロゼリアに振り向き、マニューラはやれやれといった風に手をひらひらとさせる。
「は、はい」
 ロゼリアは深刻げに頷いた。
「これでオメーは余計に負けられなくなったわけだ」
 マニューラは再び大きなため息を吐く。
「……ちょっとついてきな」
 マニューラはそれだけを言い残し、部屋を出ていく。ロゼリアは黙ってその後をついていった。

 そうして着いた先――。震え上がるほどの冷気がロゼリアを迎える。
「オレのとっておきの場所だぜ。今日からここがオメーの遊び場さ、ヒャハ」

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