第38章


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 葉の途切れざまにニューラは一気にロゼリアへ駆け寄り、右手で首根っ子を掴んで地に押さえ付けた。そしてゆっくりと左手を上げ、爪をロゼリアに見せ付けるようにかざす。
 絶体絶命。ロゼリアにはニューラの爪が、本で知った人間が死刑に使う断頭台の残忍な刃に被って見えた。まさに刃が下ろされようとしたその時――
「何だか楽しそーだな、お前ら。オレも混ぜてくれよ、ヒャハハ」
聞き覚えのある声が部屋の入り口から響く。

びくり、としてニューラは動きを止めて声の方を見る。

「どーした、オレに見られたくないことでもしてたのか?まあ!てめーらったらいけない人ッ!クク」
「マ、マニューラ……!」
 案の定、そこにはマニューラが立っていた。飄々とした様子でマニューラは二匹に歩み寄っていく。ニューラの目からハンターの気迫は一瞬で消え失せ、叱られた飼い猫のような怯えきったものへと変わる。慌ててニューラはロゼリアから離れた。その拍子に、きらきらした何かがこつんと地に転げる。
「んー、なんだこりゃ?」
 興味深そうにマニューラはそれ――光の石を拾い上げた。ぎくりしてニューラは身が震えだす。
「へー、こりゃ綺麗な石だ。何だお前ら、これ賭けて決闘でもしてたのか?」
 ぶんぶん、とニューラは首を縦に振るう。そしてちらとロゼリアを横目で睨んだ。
 へー、ほー、とどこかわざとらしく大げさに言いながら、マニューラは石とニューラ達を交互に見やる。そして出し抜けにニューラを殴り飛ばし、呆気に取られるロゼリアの額をぴんと爪で軽く弾いて転ばせた。
「ヒャハ、オレの勝ち。というわけで今日からこの石はオレのものだな」
 勝ち誇った様子でマニューラは光の石を掲げる。



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