第38章


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 血相を変えてロゼリアはマニューラに駆け寄る。ニューラ達の上げていた歓声も、一気に騒然としたどよめきへと変わった。見事なまでの戦いぶりに忘れかけていたが、マニューラは手負いなのだ。とっくに限界がきていてもおかしくはない。
「大丈夫ですか、しっかりしてください!」
 焦りに震えながらロゼリアは声をかけ、倒れているマニューラを見た。その右半身はじっとりと朱に染まり、両の目は閉ざされている。ロゼリアの顔は益々青ざめ、頭は真っ白になった。事態の重さに押し潰されそうだった。憧れだった存在が、自分のせいで無きものになってしまう。そんな事になれば、ロゼリアの小さい心は耐えられそうもない。
 絶対に助けなければとロゼリアは決起し、震えをぐっと堪えて、まずは息を確認しようと顔を寄せる。と、その時、不意にマニューラの目がぱちりと開く。
「……何やってんだ、オメー?」
 そして、そう怪訝そうな声を上げ、くっつきそうな程に迫っているロゼリアの顔をじろりと睨んだ。へ?と素っ頓狂な声を上げ、ロゼリアは思わず固まる。

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