第38章


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 ・

「はあ……」
 一匹でとぼとぼと歩きながら、ロゼリアはため息をつく。どんなに頑張って走っても、いつまで経とうがニューラ達の姿はおろか、つけていったであろう足跡にさえ追い付くことが出来ない。時間が経つにつれて雪が降り積もるにしても、吹雪いているわけでもないのに、そんなに早く足跡が埋もれるものだろうか。そんなはずはない。
 ようやくロゼリアは冷静に返って立ち止まり、自分がはめられたことに気付く。あの北へ向かうというサインがあった場所から足跡が急に途切れているなんて、よくよく考えればあまりに不自然すぎる。きっと石を盗ったあのニューラが足跡を掻き消し、おそらくサインにも細工をしていったに違いない。もっと疑ってかかるべきだったと後悔しても、もう遅すぎた。
 今更サインの所まで戻れたとしても、もはや足取りは掴めないだろう。それどころか自分一匹だけではそこからニューラ達の巣穴まで帰れるかも怪しく、遭難してしまいかねない。
 あまりの八方塞がりの状況。絶望に打ちひしがれるロゼリアだったが、ふと視界のずっと先で、もうもうと上がっている雪煙を捉える。初めはただ風によるものなのだろうと、ロゼリアは気にも止めなかった。しかし、こちらへ徐々にそれが近づいてくるにつれ、雪煙は何か茶色い何匹もの物体が、豪快に雪を掻き分けて進んでいるために上がっているのだと気付く。そして、その茶色の群れを俊敏に追う、見覚えのある黒い影達。
「あれは――!」

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