第38章


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まんまとロゼリアを出し抜き、足枷の無くなったニューラ達は、マニューラと他のチームに追い付こうとぐんと走る速度を上げた。三匹は程なくしてニューラの一団に追い付き、並走しながら狩りの状況を尋ねる。
 ようサボってたのかい?これはこれはお早い到着で。有望なルーキーが入って良かったな等と、他チームのニューラ達は遅れてきた三匹をにたにたとしながら口々にからかった。
「うるせーっつの。それよりどうなってんのかさっさと教えな」
「へーへー」
 どうにか聞き出した話によれば、更に先行しているマニューラとニューラ数匹が、少しずつ北東へと獲物を追い込んでいる最中らしい。他チームのニューラ達はこれから二手に分かれて先回りし、三方から包囲する寸法のようだ。
 何とか間に合ったようだと、三匹は胸を撫で下ろす。
「あれ? ところで、あのチビの姿が見えないけど、一体どこにやったんだよ」
「知らねえよ」
 他チームニューラの問い掛けにニューラはぶっきらぼうに答えた。
「いいのか。あれに何かあったらマニューラにきつくどやされるぞ」
「へっ、いつも以上のご丁寧さでそこかしこに刻んである指示さえ見逃さなきゃ、遭難することはねーだろ。まあ、万が一どこかで“読み間違え”たりしていたらどうなるかは分からねえが、そん時ゃ自業自得だっつの。あのヘナチョコもしっかりサインの意味は習ってんだからな」
 ざまあみろ。心の中でニューラは笑った。奴は今頃、細工したサインに騙されてあらぬ所へ行っているはず。意味を書き替えた部分は後でそれとなく消してこよう。確か『西』を『北』にしたんだったな。
 ――ん?北?マニューラ達が向かっているのは北東……。いや、まさかな。
 不意に湧いた嫌な予感を、ニューラは有り得ないと奥に押し込んだ。

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