第37章


[08] 



「それで、地下に住むお前達がこんな山頂付近にまで何用かな?」
「はい。ルカリオ様の武勇は我らが潜む暗い地下深くにまで轟いております。
そんな高名なあなた様に折り入ってお願いしたいことがあって参りました。
邪魔な、乱暴な地下のぬしを討っていただきたいのです」
 岩や鋼の表皮をもつ一部のポケモンにとって土や石、鉱石は自分の体を作るために必要な栄養となる。
一見、鋼や岩の体には見えないヤミラミ達も、宝石のような両目と胸の結晶を保たせるために石が必要なのだと言う。
鉱石は貴重な栄養源だが上質なものは数が少なく、草木のように簡単には生えてこないため、それを巡る争いは絶えない。
離島である鋼鉄島に住むポケモン達は争いで共倒れしてしまわぬよう、
昔から続く暗黙の了解でもって鉱石を分け合って暮らしていた。
 しかし、最近になって突如として、ぬしであるハガネールの態度が豹変したのだとヤミラミは話す。
皆の分の鉱石まで貪り食い、ヤミラミ達にまるで暴君のように振る舞っているというのだ。

「どうかお願いします。仲間達は飢えております」
 大きな頭を地に擦り付け、ヤミラミ達は切願した。
「理不尽な暴力に苦しむ者達を救うのも我が務めだ。行こう。どうか頭を上げてくれ」
「おお……ありがとうございます!」
 ルカリオの返答にヤミラミ達は飛び上がりそうなほど喜ぶ。
ミミロップとチャーレムに話そうと背を向けたルカリオの影で、ヤミラミ達はそっと顔を見合わせる。
口から覗く鋭い歯と、宝石の目が卑しくぎらついた。


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