第37章


[26] 


 殺気立ったまま二匹は声の方へ目だけを向ける。視線の先には、息を切らした様子でミミロップが立っていた。
「ふう……間に合った。やめです、やめやめー!」
 呼吸を整え、両手をぶんぶんと振ってアピールしながらミミロップは声を張り上げた。

「……邪魔だ。巻き込まれたくなくば、引っ込んでいろ」
 ルカリオは欝陶しげにそう吐き捨て、ハガネールは歯牙にも掛けない様子で、続けようとする。
が、ミミロップの傍らに転がされたヤミラミ二匹――片方は随分とこっぴどくやられている――に気付き、再び中断した。

 怒りの元凶が倒されているのを見て、憑きものが落ちたようにハガネールは落ち着きを取り戻す。
そして、状況が飲み込めないといった風に呟いた。
「これは、どうなっている……?」
「はめられたの!こいつら、あんたと師匠を潰し合わせて、弱ったところを襲おうとしてたんだってば!」
 ミミロップは事の経緯を二匹に話す。


「――すまなかった、ルカリオ殿。昔から一度頭に血が上ると、歯止めが中々効かなくなるたちでな」
「いえ、私も不用意でした。ヤミラミ達の動向をもっと注意深く監視しておくべきだった」
 疑いが晴れ、ルカリオとハガネールは互いに謝罪する。

「ふふん、もし私がいなかったら大変なことになっていたんですからね。感謝してくださいよ」
 そんな二匹を見ながら得意げに言い放ち、えっへんとミミロップは胸を張る。
「今回ばかりは少し助けられたやもしれんな。……だが、私はお前に留守を命じていたはずだ」
「ええー……そ、そこはチャラになるところじゃあ?」
「それとこれとは話は別だ。仮にも師の言い付けを破るとは何事か」
 反論をぴしゃりと切り捨てられ、ミミロップは「うう」と縮こまる。
「ふん、これ以上の説教はひとまず後にしてやろう。――して、このヤミラミ共はいかがする?」
 顔を青くして苦笑いで固まるミミロップを余所に、ルカリオはハガネールへ問い掛けた。

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