第36章


[05] 



 外からはサクラビスが迫り、中にはさらなる敵――退路は完全に断たれた。光は尚一層輝き、内部を照らす。
奥に潜んでいたものは大きな顎をした蛇のような怪魚だった。幾つもの目だと思っていた光は体の模様だ。

『なあに、案ずるな。そのままじっとしていろ』
 ――何を考えている、このままおとなしく丸呑みにされろというのか? 冗談じゃあない。
 大きな顎を開き、怪魚はこちらを振り向く。こちらに牙を剥いて襲ってきた瞬間に、言い付けなど無視して電撃を見舞ってやろう。
しかし、怪魚は俺の姿などまったく見えていないかのように横を過ぎ去り、外のサクラビスに飛び掛かった。
俺が呆気にとられている中、二匹は激しく争いながら祠から遠退いていく。

『ハンテールの弱々しい光ごときで、我が加護はかき消せんよ』
 気付くと、俺の体にはいつの間にか色濃い影が外套のように纏わりついていた。



[前n] [次n]
[*]ボタンで前n
[#]ボタンで次n
[←戻る]




Copyright(C)2007- PROJECT ZERO co.,ltd. All Rights Reserved.