第36章


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 ヒカリ達は悲鳴を上げる事もできずふらりと腰を抜かす。
その拍子にヒカリのショルダーバッグが開き、ごとりと固い音を立てて何かが床に落ちて開いた。
電子手帳のようなそれは、ヒカリのポケモン図鑑。
出会ったポケモンに向けるだけで自動でデータをスキャンして記録していくハイテク品だ。
だが、こんな得体の知れない幽霊が相手の状況では何の役にも立たない代物――のはずだった。
 今にも憑かれて呪い殺されるかもしれないような危機的状況にありながら、
大切なポケモン図鑑を無くして博士達に迷惑をかけるわけにはいかないという一心で、
ヒカリはポケモン図鑑を拾い上げる。ふと目に入った図鑑の画面にはいつの間にか見たことのないポケモンの姿が記録されていた。
 ヒカリは一日の記憶に頭を巡らせる。今日、ポケモン図鑑を取り出して使ったのはナタネさんに会う前に森でアゲハントに一回、
そして洋館へ来る途中でヤミカラスとケムッソを確認した時、そして今この瞬間だけ。
ロトム――こんなポケモンは洋館に来るまで記録されていなかった。
捕まえて詳しい分析にかけるまではタイプはわからないけれど、見た感じで受ける印象は電気、エスパー、またはゴースト。
ゴーストやエスパーポケモンなら、幽霊みたいなイタズラだってできるかもしれない!
 ヒカリはショルダーバッグに手を突っ込み、捕獲用のモンスターボールを探り出す。
自分の直感に一か八か賭けてみることにした。


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