第36章


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「なぜ? お前の三本角の立派さは惚れ惚れする程だ。行く行くは群れで長にだってなれるかもしれない。
何か弱みでも握られているのか?」
 ポッチャマ族には、くちばしから伸びる三本の角が最も立派な者が群れを率いるという習性がある。
ポッタイシの言う通りエンペルトの角は見事なもので、これからのさらなる成長を踏まえれば王たる風格が確かにあった。
 しかし、エンペルトはそっと首を横に振る。
「そうじゃないポチャ。僕は自分の意思でここに残りたいんだ。
群れに戻るのも一つの幸せかもしれない。けど、それは極狭い範囲のものポチャ。
ボス――ピカチュウは僕に広い世界の夢を見させてくれたポチャ。僕は狭い幸せより、広い世界を選ぶ」
 エンペルトは真っすぐに目を向け、ポッタイシに告げる。
「……ふん。馬鹿だな、お前は」
 ポッタイシは素っ気なくそう言い、そっぽを向いてみせる。そして目の辺りを分からないようにそっと拭った。
「ごめん」
「何を謝っている。お前が決めたことだ。私に謝る必要なんてないだろう馬鹿め。
分かった。お前達に一時的に協力する。ワタッコ殿もそれでいいかな?」
 部屋の隅でワタッコは静かに頷く。
「ありがとう。で、具体的に何をすればいい? ヒカリ達に怪我をさせるようなことなら許さないからな」


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