第36章


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 エンペルトの姿を見て、ポッタイシの顔に驚きと喜びが入り混じった表情がうっすらと浮かぶ。
だがすぐに我に返ったようにエンペルトをきっと睨み付け、その頬をしたたかに羽で打った。
「……効いたポチャ」
「こんな所で何をしている! 勝手にいなくなって……どれだけ私が、どれだけ皆が心配して探し回ったと思っているのだ!」
 痛そうに頬をさするエンペルトに、さらに胸倉を掴む勢いでポッタイシは詰め寄る。
「まあま、その辺で。気の強えお嬢さんだ。あっしの所のエンペルトとどういう関係で?」
 状況を飲み込めずしばらく黙って見ていたドンカラスだったが、ここで仲裁に入り二羽を引き離す。
「おい、このおっさんはなんだ」
 ポッタイシは欝陶しげにドンカラスの羽を払い除けて言い放った。
「お、おっさん……?」
 その言葉にドンカラスはぴしりと凍り付く。何気ない一言であったが、
それは年相応以上に老けて見られることを気にしているドンカラスにとって禁句の一つだった。
「ごめん、ドン。それは僕から話すよ」

    ・

「ほーぉ、研究所で飼われてたポッチャマの群れの幼なじみねぇ」
 ポッタイシをじろりと不機嫌そうに見やってドンカラスは言う。
「なあ、くだらない事はやめて、私とヒカリとともにナナカマド殿の研究所へ帰ろう。皆、きっと暖かく迎えてくれる。
もうトレーナーに貰われていく時期は逃してしまったかもしれないが、また群れに戻ればいい。
群れの頭の固い連中は何か言ってくるかもしれないが、昔みたいに私が説得する。
こんな賊まがいの輩共にいつまでも世話になる必要はないだろう」
「悪いけど僕は帰れないポチャ」



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