第36章


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 そこは人が住んでいた頃は食堂として使われていた部屋のようだった。
中央には大きくて長いテーブルが鎮座し、幾つもの椅子がそれに沿って並んでいる。
テーブルの上に敷かれた、元々は純白であったろう黄ばんだテーブルクロスには、
何の物ともわからない沢山の染みが不気味な模様を描いていた。
 その染みの一つに、付いたばかりのような真新しいものがあった。
そしてそのすぐ下に木の実の食いカスが散らばっていることに気付き、
ヒカリはハンカチ越しに恐る恐る欠片の一つを拾い上げてみる。
皮の色と独特の渋い匂いから、それはシーヤの実ではないかとナタネは推測した。
 これはつい先程までここで誰かがここでシーヤの実を食べていたということになる。
何かがこの洋館に潜んでいる。それは確信へと変わった。
 ミシリ――その時、かすかに部屋の天井が軋むような音を立て、ヒカリ達は息をのんで見上げる。
そこには何も居ないはずなのに、コンッ、コンッと今度は今度は天井を直にノックするような音が続けて鳴りはじめる。
ラップ音はその後も激しさを増して部屋中を駆け巡り、ヒカリ達は恐怖のあまり目を瞑り、耳を塞いでしゃがみこむ。
 その隙に、いくつかの影が食堂を抜け出していったことにヒカリ達は気付くべきだった。



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