第36章


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「そこに誰か居るの……?」
 正面奥の部屋に向かってヒカリは声をかけてみる。
すると、返事の代わりとばかりに再び小さな物音が立ったのをヒカリの耳が捉えた。
 何かが隠れているんだろうか。それが人間であれば、廃墟に勝手に住み着いてはいけないと注意しなければならない。
ポケモンだったならば、おとなしい子ならそっとしておいてあげればいい。
危害を加えてくるような凶暴な奴や、本当に噂どおりの化け物や幽霊だった場合は――
もしもの時を考え、ヒカリは予め自分のポケモンを護衛に出しておくことにした。
 腰のホルダーからモンスターボールを一つ取り外すと、彼女はそれを軽く放り投げる。
宙でボールは開き、その中から光と共に飛び出したのは、エンペルトを一回り小さくしたようなポケモンだった。
「危なくなったら守ってね、ポッタイシ」
 ポッタイシと呼ばれたそのポケモンは、ヒカリの呼び掛けに一鳴きして応えた。
 横でナタネも同じようにしてポケモンを繰り出す。藍色の丸い体をしていて、
両手と頭の上にボンボンのように白い綿毛を生やした、ワタッコというポケモンだ。

 とりあえずは物音がした奥の部屋を調べてみようと、ヒカリ達は向かった。
部屋の入り口脇に置かれた見知らぬモンスターをかたどった石像が、
何だか睨んでいるようで今にも動きだしそうな気がしてきて、少し怯えながらその横を通り抜けた。



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