第36章


[03] 




 ・

 歩けど歩けど、一向に神殿にたどり着ける気配はない。もう数時間は歩き続けただろうか。
目に見える神殿の全体像は徐々に大きくなっているため、着実に近づいて行っているのは間違いないのだろうが……。
幸い、不思議と腹は減らないため食料の心配は今のところ無いが、疲れは精神的なものを含めて否めない。
少し休憩しようとそびえ立つ柱の一本の傍に座り、一息をついた。ギラティナも黙認しているのか何も言わない。
 それにしても、不思議な材質の美しい柱だ。道中でも同じものを何度も見て気になってはいたが、まじまじと眺め新たな特異性に気付く。
乳白色だけでなく、時に極淡い桃色も帯びた奥行きがある輝きはまるで真珠――。魅入られたようになり、ふらふらと柱に手を触れた。
『たわけが! それに触れるでない!』
 ギラティナの声が頭の中で大きく響き、俺はびくりとして手を柱から離した。
柱はびりびりと振動し、周りの柱が音叉のように反響しだす。
『遅かったようだ。何度も、近寄るたびに柱には決して触れぬように忠告はしていたはずだが、
届いていなかったとは既に心が捕われていたか。奴らが来る。すぐにその場を離れて物影に身を隠せ』
 振動の波は空気を伝わって広がっていく。上空で点のごとく輝いていた光達が散らばり、その一つがぐんぐんとこちらに迫ってくる。
その正体は桃色の鱗をした細長い体系の巨大な魚だ。口先はダーツの矢のように鋭く尖っている。
 ――魚? 魚が、魚が宙を泳いでいる!
『決して手は出すな、奴らからは逃げることに徹しろ! 下手に危害を加えれば、さらなる“大物”を呼ばれかねん』



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