第36章


[02] 



『剣はあくまで最終手段と思え。できうる限り他の方法で切り抜けよ。
失敗したその時は死以上の苦痛がもたらされることだろう。ゆめゆめ忘れることなかれ』
 暗闇に慣れた目を光から守りながら門をくぐり、外へと歩み出る。眩しさに顔を歪めながらゆっくりと手をどけ、
徐々に目を慣らしていった。そこに広がる景色は、自分達の世界とあまり変わりが無い。
高原のようで、大地には短い草が生い茂り、先程の建物内と同じ乳白色をした柱や石で組まれた簡素な
ゲートのようなものがあちらこちらに点在している。
それは想像していたものより随分と平和的な光景に俺の目には映った。どこに恐れるような危険があるというのだろうか。
 話に聞いた通りに遥か遠くの切り立った高台の上にに霞む巨大な神殿らしきものを見つけ、
目的地と進路を見定める。長い旅路となりそうだ。
 ちらちらと青空の向こうで反射するように輝く無数の光達が目に入り、見上げる。
時折、魚が泳ぐかのように移動しているようにも見えるが、一体何だろうか――。
『相も変わらず……。趣味の悪い世界だとは思わぬか?』
 ギラティナの領域も、他のことをとやかく言えるような世界では無いだろうと思ったが、伝わってしまわぬように努めた。
『直に真の姿が分かる。さあ、行け』
 急き立てられ、俺は再び歩を進め始めた。その時、空の光の一つがこちらの動きに僅かに反応を見せた気がし、
注意深く見なおすが、何も変化はないように思える。気のせいだったのだろうか。



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