第36章


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「――まったく、マージさんだからあまり強くは怒らねえが、今後はこういうイタズラは無しで頼みやすぜ」
「はいはーい」
 美味しそうに木の実を頬張るムウマージを見ながら、ドンカラスは苛立ちを極力抑えて言う。
行き場を無くしたこの怒りをどこでどう晴らそうか頭を巡らせ、苛々とした様子で食堂を出ていった。

「後、電化製品へのイタズラもだめだよ。危ないし、みんな困ってるから」
「それはマージだけじゃできないイタズラだよー」
「ん、どういことだい?」
「えーっとねー……あたらしいおともだち」
 エンペルトは首を捻る。洋館で起きた異変は、すべてムウマージの仕業だとエンペルトは思い込んでいたのだ。
 ――まだばらばらに行動をとるのは不味い!
 瞬時に判断し、エンペルトはドンカラスを呼び止めに向かった。

「んぎゃあーッ!?」
 食堂のすぐ外からドンカラスの叫び声と、屋内にもかかわらず強い風が食堂に吹き込んできた。
「遅かったポチャ……」
 息をきらせた様子でドンカラスが食堂へと駆け込んでくる。
「畜生、暴れ扇風機だ! マージぃ! あれを止めやがりなせえ!」
 その頭は、帽子型の羽毛のてっぺんだけが刈りとられ、河童のようになっていた。
「きゃはは、へんなあたまー」
 それを見てムウマージはけらけらと笑い、エンペルトも思わず吹き出しそうになるのを口を押さえて堪える。
 二匹の様子を怪訝に思ったドンカラスは、恐る恐る自分の頭を触ってみた。
そしてその意味に気付き、先程より大きな叫び声が洋館を揺るがした。


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