第36章


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 元々、幽霊が出るといわくつきの館ではあったが、最近になって館からの騒音や、
館から飛び出していく沢山のヤミカラス達を見たなどの不可解な情報が相次ぎ、
ハクタイシティのジムリーダーであるナタネが派遣されたという次第だ。
 ここで会ったのも何かの縁だとナタネに協力を頼まれ、ヒカリは快く承諾した。
外見からして不気味な洋館へ行くことに抵抗はあったものの、
ジムリーダーを務める程の手練のトレーナーであるナタネと一緒であれば大丈夫だろうと踏んだのだ。

 しかし、実際はこの体たらく。ヒカリは困った人を放っては置けない自分の質を恨んだ。
確かにナタネは凄腕のトレーナーに間違いない。ただ、洋館を探索するにあたって彼女は大きな弱点を抱えていたのだ。それは――。
 二人の横で今度は草むらが、がさりと音を立てて揺れる。
「いやー! お化けー!?」
 ――大のお化け嫌い。

「ケムッソですってば……ほら。大丈夫だから行きましょ、ね」
 初めは多少の恐れがあったヒカリも、自分がしっかりしなければという責任感が
いつのまにか恐怖に打ち勝ち、ほとんど怖くは無くなっていた。




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