第36章


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「やっぱりマージはいないね」
 部屋を見渡してエンペルトは言う。そして何となく足元に転がるパッケージの一つを拾い上げ、表紙を眺めた。
その瞬間、エンペルトは抱いていた疑問が解けたかのような短い声を上げる。
 ドンカラスの怪訝そうな顔に気付き、エンペルトはパッケージをドンカラスに手渡した。
「それを見てくれ」
 表紙には、不気味な皮マスクを被った男が血みどろのナイフを持っている姿が描かれている。
「ヤミカラス達が見たと言っていた怪物はみんな、僕達がマージと一緒にここで見たホラー映画に出てくる奴らに似ているんだよ」
「ビデオから化けもんが抜け出てきたとでも言いたいんですかい? くっだらねえ」
「そこまでは言っていない。だけど、ヤミカラス達はビデオを見てはいないはずなのに、
話に出る怪物の姿はここにあるホラー映画のどれかと必ず共通点がある。そんな偶然があるだろうか?
――ドン、次に怪物が出てきたらちょっと僕に考えがある。その前に食料庫に行こう。怪物はきっとシーヤの実が好きなはずさ」


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