第36章


[01] 





 影に飲み込まれ視界が覆われたと思った次の瞬間には、まったく異なる場所に俺は佇んでいた。
墓の内部のようだったギラティナの棲み処とは打って変わり、静謐で澱み気の無い空気や磨き上げられた
乳白色の壁面と床板は神殿を思わせる。だが、その過ぎた潔癖さは、また違った気味の悪さがあった。

『意識はあるか』
 頭の中に直接ギラティナの声が語り掛けてくる。俺は心の中で頷いて返した。
『問題ないようだな。では早急に封印の解呪に向かってもらう』
 有無を言わせずギラティナは促す。だが、それに取り掛かる前に解消しておきたい疑問が幾つかあった。
ここがどういった場所なのか。ギラティナが支配する領域ではないということは容易く想像できる。
そして、懸念する強大な障害とは何なのか――ギラティナへ尋ねた。

『時が来れば話そう。だが、その前にお前にはやるべき事があるはず。そこから出口は見えるな?』
 はぐらかされたようで腑に落ちない思いはしながらも、光が差し込む出口らしきものを見つけ答える。
『外に出るとすぐに巨大な建造物が遥か遠方に臨めるはず。目指すべき地はそこだ。
道中、危険が迫った時、すぐに影に身を隠せ。影は我が力。お前の存在を完全に覆い隠すだろう』
 ギラティナに対し言い様のない疑念を少しずつ抱き始めつつも、今は従うしかなかった。



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