第36章


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ドンカラスとエンペルトは指された方を見てみるが、その先には既に何も居ない。
「何だ? 誰もいないじゃねぇですかい」
「嘘なんかじゃない、確かにいたんだ! 夢でも見た、皮のマスクを被って刃物を持った怪人だ!
俺もうこんな館嫌だ! 一足先にさいなら、ドン様、どうかご無事でー!」
 ドンカラスの脇を擦り抜け、止める暇もなくあっという間にヤミカラスは逃げていってしまった。
「あ、おい! ……クソッタレ」

 そんなやり取りを面白可笑しく覗き見る二つの影があった。
片方は濃い紫色の影で、もう片方は橙色をした小さな影だ。
「きゃはは、こわがってるこわがってるー。さすがだねー、きみのちからー」
「いやいや、あんたの悪夢と変装もなかなかのもんだよ。ホントあんたには感謝してもしきれないや。
うぷぷ、あの前々からいけすかなかったカラスが困ってる姿……歌でも歌いたいような実にスガスガしい気分!」

 ドンカラス達の知らないところで更なる危機が洋館へと迫る。
 人間の少女二人組が、恐る恐ると言った様子で洋館へとやって来ようとしていた。
「そんな後ろに隠れないでくださいよ、ナタネさん」
「あ、あたしはヒカリちゃんの背後を守ってあげてるの! 別に隠れてるってわけじゃないわ」
「もう……」


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