第36章


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「うむむ、かもしれねぇな。――そういや、おめえ、芝刈り機に襲われた時はここに何を探しに来てたんでぇ」
「新しいビデオがないか探しに来てたんだ。マージが退屈そうにしていたからさ」
「ん? そうだ、マージさんは今どこで何してる」
「そういえばここの所見かけないね」
 それを聞き、ドンカラスの顔が見る見る青ざめていく。
「不味いぞ。洋館はこんな状態で、しかもマージさんまで行方知らずなんて
ボスが帰ってきたら何を言われるか……一刻も早く見つけねえと!」

 その時、部屋の外でドスン、と大きな物音が響く。ドンカラス達は身動きを止め、口を閉ざした。
「……おい、おめぇちょっと様子見て来い」
 数時間にも感じるような数分の不気味な程の静寂の後、ドンカラスはヤミカラスの一羽に命じる。
当然、ヤミカラスは嫌がったが、無言の圧力を受けてしぶしぶ様子を見に部屋を出ていった。
 直後、悲鳴とそれを掻き消すように大量の水を吹き出すような音が廊下から響く。
 聞き付けたドンカラス達が一斉に部屋を飛び出すと、廊下は天井までびしょ濡れになっており、
ヤミカラスは壁ぎわでぐったりとして倒れていた。
駆け寄ってみるとヤミカラスにまだ息はあり、うわごとのように“洗濯機が”と繰り返し呟いている。

「ちぃっ、のびちまってるな。洗濯機がどうしたってんでぇ」
「ドン様……あ、あれ」
 ヤミカラスのもう一羽が廊下の向こう側を羽で指し示し、顔面蒼白でガクガクと震えだす。



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