第36章


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 早速、洋館内の調査に取り掛かろうとドンカラスはヤミカラス達を呼び付ける。
しかし、いくら待っても、何度ドンカラスが呼ぼうとも、一向にヤミカラス達は集まらない。
 結局、ドンカラスの目の前に揃ったのはたったの二羽だけだった。

「……他の奴らはどうしたんでぇ」
「その、怪異が収まるまで――あー、じゃなくて、暖かくなるまでしばらく別の地方に渡る、と」
 ドンカラスに睨まれ、縮こまりながらヤミカラスの片方が答える。
「逃げやがったな、あの野郎共……」
「じゃあ、俺達もここらで失礼をば」
 わなわなと怒りに震えるドンカラスを横目にヤミカラスはそそくさと逃げていく。
 だが、即座に二羽とも首根っ子を掴まれ、捕まえられてしまった。

「あっしらは渡り鳥じゃなくて留鳥だ。面倒な渡りをする必要はねぇよなあ、んん?
 それにワルはくだらない超常現象なんて信じねぇし、恐れねぇ。そうだろう、おい?」
 意地悪く笑いドンカラスはヤミカラスを睨め付ける。二羽はただ乾いた笑みを浮かべるしかなかった。

「さぁさ、お供も増えたことだし、行きやすぜ。エンペルト」
「でも、正体のわからないものを相手にどうするんだ?」
「この世にただ不可思議なものなんてありゃしねえ。必ず種はあるし元凶はいるもんでさあ。
それを虱潰しに捜し出してとっちめりゃあっという間に解決だ」
 廊下を進みながら、ドンカラスは話し続ける。
「こんな悪質な嫌がらせをする奴で考えられるのは、一番に浮かぶのはマニューラでぇ。
奴なら忍者みてぇな身のこなしで消えるように物陰に潜めるし、手先が器用で小ずるい細工も大の得意だ」
 部屋の一つの前に辿り着くとドンカラスは立ち止まり、勢い良く扉を開ける。
そこはエンペルトが芝刈り機に襲われたという倉庫だ。
四羽がかりで部屋中を探してみても既にそれらしきものは無く、めぼしいものは見つかりはしなかった。

「何も居ないな。芝刈り機も見つからない。ドン、犯人はマニューラとは違うんじゃあないかな。
芝刈り機は結構大きくて重そうだったし、すぐにここから運びだして隠すのはいくらマニューラでも難しいと思う。
それに今はロゼリアの面倒を見てるんだろう?」



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