第34章


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 単独行動か――。
 久しく無かった事態に若干の戸惑いを感じる。
「どうした? よもや、徒党を組んで馴れ合わねば何もできないなどと言うのではあるまいな」
 見透かされたかのようなギラティナの言葉に、俺の心は強く反発した。
「まさか。そんなはずがあるまい。俺だけで十分だ」
 調子を強めてギラティナに反論する。
 あいつらなどいなくても一匹でやってみせる。プライドがくだらない戸惑いを跳ね退けた。
「それでいい。孤独の中で本当の力は養われるのだ。命輝く者も、命失った者も――。
さて、すぐにでも発ってもらう。準備はよいか」

 急かすようにギラティナは言う。だが、やはりミミロップ達の事が気掛かりではあった。
「出発する前に、部下に話をしておきたいのだが」
「あまり猶予はない。お前の事は私の方から伝えておこう」
 それならいいと、俺は引き下がる。無理に押し通すような事でもないだろう。
 ギラティナから延びる不釣り合いなほど大きな影の上に乗るよう促され、それに従った。

「では、始めよう。先に言っておくが、もしも送った先でお前の身に危険が迫ったとしても、援護は期待するな。
私にできる事は、魂を通じてお前を言葉で導く事と、お前が宝玉を手にした時、ここへ還す事だけ。
だが、その前にお前に授けるものがある。受け取れ」
 俺の足元で影が伸び上がり、俺の背丈程の十字架のような形で宙に固定される。少しずつ表面の影が血のように
流れ落ちていくにつれ、それは実体と化していった。



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