第34章


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「すべてのものに魂は宿る。草木、時には物にさえ。それは、かつて数多のポケモンを葬った狩人の剣に宿っていた魂だ。
狩人は自分の行いを悔い改め、その証として剣を折って捧げた。だが、持ち主も身も失った今もなお、剣の怨念は消えず、新たな獲物を求めている」

 碌でもない話を聞いて我に返り、無意識に柄に伸ばそうとしていた手に気付いて、止める。
「待て、そんな厄介そうなものが何の役に立つ。そもそも俺は剣など扱えんぞ。人間でもあるまいし不可能だ」
「物を敵に投げ付けるくらいの知能はお前にもあるだろう。使い方を誤らない限り危害を受ける事はない。
もしも、あちらで強大な障害に出くわした時、その剣を呼び出し、思い切り投げ付けろ。殺すことはできなくとも、
しばらくの間は動きを止めることくらいはできるだろう。使えるのは一度きり。賢く使え」

 半信半疑ながら、そして強大な障害という嫌な言葉を聞きながらも、俺は恐る恐る剣の柄を掴んだ。
すると、たちまち剣は再び影となり俺の腕輪へと吸い込まれる。
 ギラティナはそれを見届けると、すべての尾を地に突きたてた。
そして、体の奥底を震え上がらせるような咆哮が上がったと思った瞬間、影が大きな顎となって俺を飲み込んだ。

「さあ、行け。決して失敗は許されない。お前が正しい選択をできると期待しているぞ――」



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