第32章


[06] 



 じめじめとした厭な空気が、鬱蒼と生い茂る木々と草むらの間に瘴気のように立ちこめ、毛にまとわりついてくる。
 ハナダシティから川を隔て北西に位置する小高い丘の麓に、洞窟は口を開けて待ち構えていた。
 人の手により入り口が封鎖されていたようだが、既に鉄の扉は蝶番が壊れたのか外れており、その役目を果していない。

 奴は、ミュウツーは恐らくこの洞窟の奥にいる。そうペルシアンの一報が入ったのは、
鳥達が情報の収集を始めてから二日程経った後だ。
 すぐに話し合い、俺とミミロップ、ロゼリア、ムウマージ、アブソルの計五匹で調査に向かうことにした。
 ペルシアンも調査へ行くことを望んだが、俺達の身に何かがあった時の為に待機しているよう説得したのだ。
 アブソルにも残るように言ったのだが、頑なに聞かず、仕方なく連れてくることになった。

「んじゃあ俺っちらはここらで待ってりゃあいいんだな」
 プテラはペルシアンの部隊に身を置くことを自ら決め、ピジョンの後任を任される事となった。
 ミミロップとアブソルの空輸を他の鳥達と共に引き受けてもらい、俺達は空から洞窟の前まで辿り着いたのだ。
「せいぜい気ぃ付けておくんなせぇよ」
「ああ。ご苦労だった」
 プテラに礼を言い、俺達は入り口の方へと歩んでいく。
 ここから先、一瞬でも気を緩めることはできない。
ミュウツーを止める。力付くでも、あの圧倒的な力と戦うことになろうと。

 ふと、入り口付近の土に靴の跡が残っていることに気付く。くっきりとして真新しく、つい先程できたかのようだ。
 ――まさか人間が来ているのか? ……厄介な事になった。

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