第32章


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 レッドは首を傾げ俺を見つめた。
「何のつもりだい? 突然、意味もなくじゃれついてくる子には見えないけど。
道に迷ったようにも見えないし――もしかして、また僕に協力してくれるとか?」
 俺は首を縦に小さく振ってみせる。そしてレッドのジャッケットの裾を片手でくいくいと引っ張りながら、
ミミロップ達の待つ川岸をもう片方の手で指し示した。
 くす、とレッドは笑う。
「そうか……危険な事にわざわざ自分から首を突っ込むなんて、相変わらず変わった子達だなあ」
 それは前々からお前がやっていることだろうに。
「ふん、お前に言われたくはない」
 自分のことを棚に上げた発言に、思わず悪態が口をついて出てしまう。
だが、人間に我らの言葉など通じはしない。気にすることもないだろう。
「はは、まったくだよね。――それじゃあ君の仲間を迎えに行こうか、小さなヒーロー。
カメックス、元の岸に一旦戻ってくれ」
 ヒーローなど冗談ではない。最終的な目標はその真逆だ。
 ――今、何かが変ではなかったか。
 違和感に、ふと気付く。……いや、まさかな。


 岸に着きカメックスから降りると、レッドは俺達とカメックスを交互に見比べた。
「さて、どうしようかな。全員をカメックス一匹には乗せられないよね。そっちの二匹は結構大きいし」
 ひとしきり悩んだ後、レッドはモンスターボールを取り出す。
 気付いた俺達は一斉にレッドから後ずさり、離れた。
「違う、違う。捕まえるつもりじゃあないよ。これ中身入ってるから。信用ないなあ。出てこい、お前達!」
 もう一つボールを取り出し、レッドは同時に放り投げた。
 ボールの中から現われたのは、一対の立派な翼を背に生やした赤い竜と、
でっぷりとした体系の黒い大きなポケモンの二匹――リザードンとカビゴンだ。



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