第32章


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 敵は強力だ、戦力は多いに越したことはない。道中は少しでも全体の体力を温存し、
後に控えている避けられぬであろうミュウツーとの戦いに備えなければならない。
 あまり多くの人数を連れ立つと敵の目に留まり余計な戦闘を招くことになりかねんが、
こいつは一人で――ホルダーには六つのモンスターボールが取り付けられている――六匹分。
所詮、人間なため本体自体は軟弱で役に立たないとしても、その指揮の下に動くポケモン達は大きな戦力となる。
見たところエーフィ、そしてカメックス共によく鍛練されており、トレーナーとしての腕前もそれなりに認められるものだ。
 目的はほぼ同一。敵の敵は味方。大いに利用、もとい協力させてもらおう。
「あの者と共に行くぞ」
「それがいいでしょうね」
 ミミロップが賛同する。「置いていかれては元も子もない。急ぐぞ」

 カメックスに跨がり岸を離れていくレッドの背に向かって一足先に俺は駆け出し、背負っているバッグに飛び付いた。
「うわ!」
 突然の衝撃にレッドは声を上げ、体を軽くよろめかせた。主の異変にカメックスはひどく驚き、大きく揺れる。
その拍子にバッグが開いて幾つか道具が零れ、川に落ちる音がした。
 激しい揺れに耐えつつ、飛び付いてきたものを掴もうと迫るレッドの手を避けながら、
俺は体をよじ登って渡り、レッドの目の前に顔を覗かせた。
「な、何で――っと、僕は大丈夫、大丈夫だ! 落ち着くんだ、カメックス!」
 俺を確認し、慌ててレッドは暴れるカメックスの甲羅を踵で叩き、叫んだ。
 カメックスは徐々に平静さを取り戻し、暴れるのを止めた。
 ふう、とレッドは安堵の息を吐き、荒れる息を整える。
「君かぁ……。まったく、驚かせないでくれよ」




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