第32章


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 赤服はしゃがんで俺達に目線を合わせると、そう微笑みかけてきた。
「何だかまた君達に助けられたみたいだね。ありがとう。
それにしても随分と久しぶりだな、君達を見たのは。シルフビルでの事件以来かな」
 にこやかに赤服は俺達に話し続ける。
 過去の世界で共にロケット団と戦ったあの人間の子供。
自身に及ぶ危険など顧みずポケモン達のために戦った人間の一人であり、
ミュウツーに反発する事を俺に決意させた要因の一つだ。
 それが三年近い月日を経て成長した姿で、再び俺達の前に姿を現した。
「……確かレッドとかいう人でしたっけ。僕達と一緒に戦った」
 ロゼリアが声を潜めて言う。
「ああ、そのようだ」
 神共の手によりどのような記憶の改竄が行われたのかわからんが、互いにその存在は覚えているようだ。
 思わぬ再会に何か感慨深いものを感じてしまいそうになりながらも、ふと我に返る。
 まだ油断はならない。こいつが一体何の目的で現われたのかまだわからないからだ。
「君達はここに住んでいるのかい? ――って、そんなわけないか。他のポケモン達みたいに狂暴化していないしな。
この洞窟は危険だ。それも正体不明のポケモンが、新しく住み着き始めたらしい今はいつも以上にね。
助けられた僕が言うのも難だけど、迷い込んだのなら早めに抜け出したほうがいいよ」
 正体不明のポケモン――まさか人間達もミュウツーの存在を嗅ぎ付けているのか。
 奴の存在は公に広く出回るような情報とは思えない。だが、研究の関係者にしては知っている情報が漠然としている。
「さてと、そろそろ調査を再開しないとな。例のポケモンも、君達みたいにおとなしい子だったらいいんだけど、
そうはいかないだろうな。もし危険な奴なら、悲しいけど倒さなきゃならない。……じゃあ、君達も気を付けて」
 そう言って、レッドは腰を上げた。そしてカメックスに波乗りの指示を出す。
「野性のポケモンに同じ言葉が通じる友達みたいに話し掛けてくるなんて、
相変わらず変わった人。でも、どうやら目的は私達と似ているようね」
「うむ……」
 協力して進むべきか否か――。




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