第32章


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 ゴルバットとの距離、約二メートル。異変に気付いた赤服の人間は即座に振り向き、
繰り出したカメックスに指示を出そうとするが、既に目前にまでゴルバットは迫っていた。
 牙がその身に突き立てられようとした刹那、襲撃者の右翼に放たれた電気の帯がかする。
翼先を焼かれたゴルバットは堪らず金切り声を上げながら、赤服の体をとんぼ返りするように逸れ、
羽音を立てて天井近くまで舞い上がった。
 赤服は呆気に取られたようにゴルバットと電撃の元――俺の方を交互に見やる。
 ……思わず飛び出てしまった。手に残るピリピリとした感触が軽率な行動を戒める。
 上空から降り注ぐ羽音と耳障りな鳴き声。はっとして、赤服は表情を戻す。
「カメックス、冷凍ビームだ!」
 赤服の命令にカメックスは四つんばいになり、背甲に携えた二対の砲搭を構えた。
 ――やはり助けぬ方が良かったか。人間になど期待するべきではなかった。
 舌打ちし、俺は遮蔽物となりそうな岩陰に身を戻そうとしたが、砲搭は俺を通り過ぎ上空へと向けられる。
 砲口の数センチ先に青白い輪が一瞬輝いたかと思った瞬間、真っ直ぐに光の線が伸び、ゴルバットを貫く。
叫び声を上げる間もなく、たちまちゴルバットの体は凍てつき、氷塊と化したそれは川へと落下し流されていった。
 それを見届けると、赤服はゆっくりとこちらに目を向ける。
 俺は体勢を低く構え、頬に蓄まった電気をバチバチと鳴らし威嚇した。岩陰からミミロップ達も飛び出し、俺に加わる。
 カメックスも砲搭をこちらへ向け、低く唸る。
「ちょっと、待った待った」
 一触即発の状況。慌てて赤服はカメックスと俺達の間に入り、手で制した。
「こいつらは敵じゃないよ、カメックス」
 カメックスは腑に落ちなさそうな顔で構えをとき、立ち上がった。そしてふんと鼻息を飛ばし、苛立たしげにそっぽを向く。
 赤服は宥めるようにカメックスの甲羅を軽く叩いた後、俺達に向き直りまじまじと見回し始めた。
「うん、間違いないな。ワタルさんみたいな変なマントのピカチュウ、ウサギみたいな子、
この辺には滅多にいないはずのロゼリア、ムウマが進化したみたいな子。この組み合わせ、よく覚えている。
あの時の子達だよね? そのアブソルは新しい友達かい?」




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