第31章


[02] 



 グレン火山上空に浮かぶ白き影。夕闇に支配された空のような深い紫色の瞳に憎悪を湛え、島を見下ろす。

 全ての生命に死をもたらす地獄の業火を中心に孕んでいる忌まわしき地。私はこの島で生まれ落ちた。
ならば私はその地獄の業火より生まれし悪魔となろう。どのような非道な行いをしようと、罪の意識に心揺らぐことはない。
 島の胎動を感じる。地の奥底でうねり、暴れている。ごく最近まで何者かの力で抑えられていたかのようなあまりに急激な変化だ。
 だが、丁度いい。

 ミュウツーは深く目を閉じ、全神経を念動力の放出に集中させる。ミュウツーを中心にびりびりと大気が振るえだし、
徐々に広がる念力の振動は火山の奥深くにまで浸透していった。

 滅びるがいい、忌まわしき地。我が記憶とともに。
「これは新しい私の生誕、そして逆襲の始まりを告げる祝砲となろう!」

 ドクン――島全体が震える。悪魔の誕生に恐れているようにも、王の光臨に歓喜しているようにも、それは見えた。




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