第31章


[01] 





 ――ミュウツー!
 浮遊感から解放されたとともにもたらされる宙に放り出されたかのような感覚。自らが置かれた状況を
認識する間もなく背に鈍い衝撃が走る。
 目の前に広がるは、所々を枝や葉の形をした黒い影で乱雑に切り取られた、赤く染まりかけている空……?
投げ出された手足に伝わる雑草と土のような触れ心地とマント越しから背に伝わる湿り気。ここは――外!
 思考を妨げるぼんやりとした濃霧のような感覚を左右に頭を振るって吹き飛ばし、飛び起きた。
 ミミロップとロゼリアは探す迄もなく俺の傍に倒れていた。怠そうに唸りながら二匹とも起き上がろう
としている。とりあえず無事なようだ。
 俺達が飛ばされた場所は雑木林と化している屋敷の敷地内だった。すぐ先に屋敷の玄関が見える。
 周りの木々から数羽の小さな羽音がこちらへと飛来する。外で待たせていたポッポ達だ。ピジョン達の姿はない。
聞くと、まだ俺達以外に誰も戻っていないという。まだあの中に居るというのか。まさか身に何か……。
だとすればぐずぐずしてはいられない。救出に向かわなければ。
 ポッポ達はその場に待たせ、俺はミミロップとロゼリアを連れて屋敷のもとへと急いだ。しかし、開け放
たれていたはずの扉は隙間なく閉ざされ、ミミロップの力で押しても引いても、果ては蹴りつけようがび
くともしない。
ロゼリアの毒針も、俺の電撃をも効果をなさない。見えない壁のような力に全て阻まれてしまうのだ。
「いたた……。鉄みたい」
「あの方の力なのでしょうか。この障壁の頑強さ、そして三人を同時に同じ場所へ転送できる程の制御力。
嘘だと疑いたくなるほど強力な念動力です……」
 ミュウツーの言葉――直にこの島は滅びる――が頭を過る。一体何をするつもりだ。何を企んでいる。
 何もできず焦燥感だけが募っていく中、後方からどさりと大きめのものが地に落ちたような音が響く。
振り向くと先程まで何も居なかった空間に、倒れる三つの影――。

「ムウマージ! アブソル! ピジョン! 無事だったか!」



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