第30章


[04] 



 何かあの者について書かれているのではないか。
 台座に積もる埃と汚れを払い調べてみると、期待していたような記述は無かったが
代わりに台座の一部分に小さな四角い切れ目があるのを見つけた。
 軽く指先でつつくように押してみると僅かに奥へとずれる。秘密のスイッチというものか。
罠の可能性も一瞬疑ったが、そうであればここまで巧妙に偽装はしないだろうとそのまま指先に力を込めた。
 数センチ押し込んでカチリと音を鳴らした瞬間、像の目が敵意を示したがごとく赤に輝く。
 ――やはり罠か!
 瞬時に飛び退いて身構えるが、遠くからぎちぎちと錆びた鉄同士が擦れ合うような音が響いてきただけで、
それ以上は何も起こらなかった。
 ……背後からくすくすと数匹の混じった笑い声が聞こえてくる。俺は大きく咳払いし、
きまりの悪さを抱えながら部屋を出た。
 恐らく閉じられていたシャッターが既に開いていることだろう。
 まったく、シャッターの開閉スイッチごときに趣味の悪い仕掛けを……。やはり人間はろくなものではない。

              ・

 先程のシャッターは確かに開かれていた。
 しかし、その先の部屋はまた新たなシャッターに阻まれ、並んで二つある行き先はどちらも固く閉ざされている。
室内を探しても当然のように開く手段は無い。装置が古びているため動作不良を起こしているのかと、
像の在った部屋に再び戻り、スイッチを入れ直しては往復することを念のため数回繰り返しても、
状況は変わらなかった。右と左、二枚のシャッターは並んで口を閉ざし続けている。
 これ以上為す術はないと一階に見切りをつけ、二階の探索へ向かおうとした時、ロゼリアが俺を呼び止めた。



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