第30章


[03] 



 一階にはいないのかもしれない。そう考え、玄関から入りすぐの所に二階への階段があったことを
奥に歩みながら思い出していた時、朽ちゆく屋敷の中で今だ堅牢に一室を塞ぐシャッターを俺は見つけた。 ただの防火扉というものであろうか。だが、そうだとしたら開閉の操作パネルが近くにはどこにも見当たらない。
これでは運悪く逃げ遅れれば最後、閉じ込められてしまい逃げられないではないか。

 シャッターの先にあの者がいる可能性は低いが、とりあえず確認だけはしたほうがいいだろう。
 しかし、シャッターを力付くで開けるのは不可能に近いと判断し、まだ調べていなかった部屋に
向かい何か手段は無いかと足を踏み入れた。
 部屋に置かれていたのは半ば朽ち果てた椅子と机。そして――。

 この屋敷とあの者は間違いなく深い関わりがある。
 年月を経て埃を厚く被ってはいるが、二メートル近い巨躯を持つ実寸大の像――あの者、
ミュウツーによく似た像――がそれを物語っていた。
 入る前から薄々と感じていた事だが、やはりこの屋敷は何かが変だ。普通に住居として
使われていたのでは無いように思う。




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